53)N-K細胞機能亢進不育症原因:N-K細胞とはnatural-killer(生まれながらの殺し屋)リンパ球というもの凄い名前がついたリンパ球です。通常、「染色体異常児」や「近親児」を攻撃するのは主としてK(kiler;殺し屋)リンパ球です。Kリンパ球は遺伝子が異なるだけでは侵入者を殺傷しません。調査係のTリンパ球が「生存できない染色体異常児である」、「近親児」であると結論を下すと分泌するサイトカインによる命令で攻撃を開始します。これに対してN-Kリンパ球は遺伝子が異なるとの理由だけで侵入者を殺傷します。 N-K 細胞活性が高い人は長生きをすると思われます。感染症にかかりにくい、癌が自然に治癒する可能性が高いからです。しかし、高すぎると不育症の原因になります。極端な高値になると全く問題のない胎児まで拒絶されることになります。尚、本症は最近では同種免疫異常に含めるべきだとの意見が多くなっています。 検査: N-K細胞活性検査:本検査の”異常”値は、研究の歴史が浅いこともあって確定していません。権威ある研究では41.8%以上では70%の確率で流産すると報告されています。本院でもデータが充分ではありませんが、30%以上では治療の必要があると考えています。本検査では保険の適応にはなりません。 治療:本症は原理的には同種免疫異常不育症と考えられますので、夫リンパ球移植が適応になります。本院でも流産を阻止した症例が少ないながら存在します。しかし、免疫調整作用を期待した柴苓湯療法が本命と考えます。 ●まとめ● 不育症を流産回数で診断してはいけない。 流産を繰り返すと新たな流産の原因を作る。 不育症の病態は胎児の免疫的拒絶である。 自己抗体陽性の同種免疫異常不育症にリンパ球移植を 行ってはいけない。 抗核抗体陽性不育症にアスピリンは無効である 『コメント』不育症に黄体機能不全症、潜在的高プロラクチン血症、感染症を加える考え方があります。感染症は子宮不育症と関係があるので是とするとしても、残りの二つはあくまで不妊症に分類(偶発流産)すべき疾患で誤りです。特に黄体機能不全症は不育症はともかく、習慣流産の原因になるとすれば”習慣”黄体機能不全症でなくてはならないからです。黄体機能は周期的に変化し良い時も悪い時もあります。3回以上流産を繰り返した場合はその全ての原因が黄体機能不全にあると考えにくいのです。なぜ良い時に妊娠しなかったのだろうと考えるからです。あくまでいままでお話をしてきた総合的な不育症検査を行うべきです。 ●次ページには、不育症に関する当クリニックの「得意技」が記載されています。 ぜひご覧下さい。 |